朝永振一郎は日本の物理学者で「量子電磁力学」という、極小の世界の物理理論と電磁力の関係を研究する分野の発展に寄与、「くりこみ理論」と呼ばれる新しい理論を導くなどした功績に対して1965年にノーベル物理学賞を受賞しました。日本人としては二人目となる受賞で、アインシュタインの「相対性理論」と新しい分野だった「量子力学」というふたつの領域を結びつけるなど現在にも続く研究の礎となる、大きな功績を遺した人物です。しかし、朝永振一郎自身は子どもの頃は体が弱く病気がちで、のちに子どものころを振り返り「泣き虫でよくめそめそと泣いていた」と語っています。また学生時代のことについては「学生時代に楽しかったことや生きがいを感じたことなど一つもなかった」と言っています。大学時代に専攻を決めるときに実験物理を選ばなかったことも「体が弱く、長時間の実験で立っていると、具合が悪くなったから」という消極的な理由だったそうでその後も「物理が好きかと言われると嫌いではないが、寝食を忘れて没頭することはなかった」「実験の途中で嫌になったり、なんでこんな仕事をしているのかわからなくなった」など正直なコメントを残しています。しかし朝永振一郎の元には多くの研究者が集い、その中からは多くの優秀な研究者が育ちました。ノーベル賞の受賞もさることながら、自分は優秀ではないという自覚を持ち続け、他人の中の優れた部分を見付けるということこそ朝永振一郎の真の業績と言えるかもしれません。