南部陽一郎さんは、2008年、87歳にして「自発的対称性の破れ」理論でノーベル物理学賞を受賞しました。ノーベル賞受賞としてはなんと「遅すぎるのでは?」と物理学者たちの間では囁かれたほど過去にも様々な名論文を発表した功績もあり、その様はまるで相対性理論をなかなか世間的に理解してもらえず評価が遅れたアインシュタインに似たものがあるということで「和製アインシュタイン」とも呼ばれています。また、実際にアインシュタイン本人とも深く交流があったようです。
この「対称性の自発的破れ」理論によって、物質を構成している素粒子というものが、宇宙での進化過程においてどうやって質量を獲得していったのかを明らかにすることができました。これは現在の物理学の基礎となっている「標準理論」において大本になった概念であり、今も多くの先端研究の核となっています。「物理のたいていの問題は。いつも南部先生が足跡を残している」と表されるほど、南部陽一郎さんは様々なことに疑問を持ち自分で考えるという根っからの研究肌で、そんな自身への賛辞に対し「別の人にいわせれば,何もないところに種をまくだけ、なんていわれます。まあ、それが楽しいからやっているんですけど。人のやっていることを追いかけるよりも、何かちがうことをやってみようということはいつも思います。その方が、競争がなくて楽です」と天才は謙虚に笑っています。